Tuesday, May 11, 2010

電子書籍を巡って

5月10日からiPadの予約受付が始まった。28日から出荷される。
iPadが発表されて以来、日本の出版業界、書店、取次業者では、電子書籍を巡って多くの議論がなされている。
その過程で判ってきた出版界の実情なども面白いので、あわせて紹介したい。

日本の出版業界は売上が下がり続け、ついに全体でも2兆円を切った。出版業界全体で、任天堂1社の売上と同じくらいだ。さらに返品率は実に40%に達している。つまり取次を通して本屋に置かれた本のうち4割はまた出版社に戻ってきて廃棄されているのだ。この仕組がいわば日本の流通業の古い体質を象徴している。
本が売れなくなっていると言われているにも関わらず、書店に本が溢れているのは、実は取次業者と出版社との関係性による。 大手を除く出版社はすでに自転車操業の状態にある。それは取次が流通だけでなく、金融機能も提供しているからだ。 出版社は定価の50-70%の率で取次に卸している。しかし実売部数は悲惨で、10%も売れない本がごろごろしている。売れない本は返品。
すると最初取次に卸した分のお金がもらえるのだが、返本された分は引かれて貰える仕組みになっている。 売れようが売れまいが、沢山の本を出版して取次に押し込む。売れなければ次々出版して出荷しないとお金が入ってこない、典型的な自転車操業になっている。
だから本屋には、売れそうな作家のものか、はやりのサブカルチュアー的話題本ばかりが並ぶことになる。
本屋数も2000年に2万2000店あったのが、今や30%減の1万5500店程になってしまった。

本屋、出版社は危機感を強めている。
「本がすべて電子化されれば、本屋は売るものがなくなるし、本屋に配本している取次もなくなる」
「著作権の切れた古典など全部タダで電子化されるから、出版社は大打撃だ」
「作家が直接アマゾンと契約して電子書籍を出せば、出版社はいらなくなる」
等々。

このような状況をふまえて、3月24日、日本電子書籍出版社協会が出版社31社で組織されスタートした。
この電書協の事務局長が「紙との共存が出来るなら協力するが、紙の出版を維持できないなら協力できない。こちらがコンテンツを出さなければ、向こうも電子書籍端末を出すことはできない」とコメント。

東京電機大学出版局の植村局長は、
「本というパッケージは日本人にとってすごく便利なんです、例えば文庫本は軽くて小さい上に、500円程度と安価。落としても壊れないし、通勤電車で読むのにちょうど良いパッケージだ。」
「満員電車でキンドルを読むのは重いし、もし落としたらと考えると怖い」
「また、日米の読書文化にも差がある。アメリカでは、紙の本より安い値段設定となっているが、日本はハードカバーならおおむね2千円以下、文庫本なら500円程度と、もともとが手軽に買える値段だ。 また、アメリカでは、本は読み終わった後に捨ててしまう人も多く、消費されるものだが、日本は違う。装丁が凝ったものもあるし、日本人は本への愛着が深い。」と話している。

日本出版取次協会 林事務局長談
「紙が発明されて2000年近く続いてきた文化がそう簡単に崩れるとは思っていません、現在、総務省、文化省、経産省が出版業界を集めて議論をしているところです」

このような話を聞くと、まさにデジャブ(既視感)を感じる、いわく、
iPODが出た時、「日本ではCDからMDに音楽を移行して最新版MDウォークマンが売れているので、iPodはアメリカほどは売れないだろう」
iPhoneが出た時、「日本ではドコモを中心として、i-モードが普及しているので今更、携帯でメールやネットは珍しくない、又、地デジもお財布機能も無いので、ほとんど売れないだろう」

ジャーナリストで「電子書籍の衝撃」の作家 佐々木俊尚さんは次のように言っている。
「昔、インターネット・メールのことを、emailと呼んでいたけれど、今や単にメールになった。だからeBookもそのうちbookと呼ばれるようになるのではないか」
「15世紀にグーテンベルグが印刷技術を発明し、紙の本が広がったとき、こんなものは濡れたら破れてしまうと、わざわざ羊皮紙に書き写させた修道院があったそうです。 いま日本の出版業界で、電子書籍は普及せず、紙の本が残ると思っている人は、その当時どんな文化的変化があったかを知るべきです」
「木を切って作った紙に印刷した本をトラックで運び、売れ残りをトラックでまた運び戻して廃却処理をするより、電子書籍のほうが、地球にとっても良いことではないでしょうか」

我々中高年齢者にとって、おそらく電子書籍は大きな恩恵になるはずだと思われる。
電子書籍に抵抗のないのは若い世代だと思われがちだが、アメリカの購入者の中心は高齢者であった。 彼らにとって軽くて、文字を大きくしたりできることは電子書籍のメリットである。
日本でも、アメリカでも書店に足を運ぶのは中高年層が多い。その世代が電子書籍に移行していると言う事実は、アメリカ最大手の書店「バーンズ&ノーブル」が大苦戦を強いられ、ついには自ら「ヌック」という電子ブックリーダーまで作るはめになったことに象徴される。

高齢者が多数派になりつつある日本でのこれからが楽しみだ。

2 comments:

Anonymous said...

私は以前に百貨辞典の平凡社の経営に関係したことがあります。
日本出版販売や東京出版販売等の取次ぎは、出版も販売もせず、運送と金融をしているだけです。
彼等は本が売れようが売れまいが、出版社から着た本を本屋に配本システムに基づき押し込み、返品を引き取って出版社に送り返せば物流量に応じて売上げになる仕組みになっています。
本屋では、展示する場所がないので、極端な場合は梱包を解くことも無く返品をしています。
ブックオフに並ぶ新古本は取次ぎから本屋に行き、売れず(売らず)に返品された本を再販価格(定価)の10%近くで買い取って来た新本です。
返品率は50%近いと言われ、森林資源のムダ使いでエコの観点からも社会的な問題となっています。
良書は売れず、売れるのはエロ・グロ・ナンセンス・コミック等です。
゛悪書は良書を駆逐する゛です。

その意味で電子書籍は意義があります。

Anonymous said...

本をまとめて捨てたとき、最初は、寂しい思いをすると思った。でも、案外すっきりした。もうどんな本を捨てたのかさえ思い出せないぐらいだ。捨ててよかったと思う。

そこでふと思ったのだ。電子書籍なら、私が抱えていた問題も全て解決するではないか。これならお金のことは気にせずに何冊でも買える。それで本当に手元に置いておきたい本だけ紙の本を買えばいい。それに電子書籍だったら検索というとてつもないメリットがある。そういえばあのフレーズどの本に書いてあったかなー、なんて本の山をかき分ける必要もない。電子書籍なら本の持ち運びもすごく便利だ。旅行に何冊でも持っていける。それに本に限らず、家電製品やノートパソコンの説明書なんかは大量にあると本当に困る。こういうマニュアルの類も電子化すればものすごくすっきりする。携帯のマニュアルも紙の必要はない。はじめるためのA4の簡単なパンフレットが1枚でいい。後は全部ウェブで見るようにしてもらいたい。

ひょっとしたら電子書籍というのは結構大きなイノベーションなのかもしれない。