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聖林寺入り口 |
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聖林寺 |
奈良のお寺めぐりの聖典、和辻哲郎の「古寺巡礼」に聖林寺の十一面観音は美しく「流るる如く自由な、さうして均整を失わない、快いリズムを投げかけている」と描写されている。
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国宝 十一面観音菩薩立像 |
さらに、日本各地の十一面観音像を追って「十一面観音巡礼」を書いた白洲正子は、その第一番目に聖林寺を訪れ、その後、何度も、ここの十一面観音像を見ている。
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本尊 石の地蔵菩薩 |

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優雅な指先 |
国宝。像高209.1cm。木彫りで像の概形を作り、その上に木屎漆(こくそうるし、麦漆に木粉等を混ぜたもの)を盛り上げて造像する木心乾漆像で、奈良時代末期の作である。指先までの柔らかくて優美な造形や、穏やかでいながら引き締まった表情。蓮型の台座も美しいが、これは天平時代の彫刻の中でも当時のまま現存している唯一のものである。
身長209.1cmに台座などがあるため、下から見上げる形になるが、この一体の仏像がなかなか見飽きることがない。本当に美しい姿で、人がミロのヴィーナスと称えるのも分かる。
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後姿も綺麗 |
白洲正子は「どこか脆いようでいて、シンは強く緊張している。女体でありながら、精神はあくまで男である。その両面をかねているのが、この観音ばかりでなく、一般十一面観音の特徴と言えるかもしれない」と評している。
聖林寺の裏山を小倉山と言う、次の万葉集の歌を京都小倉山と思っている人が多い(私も)が、じつはここのことである。
夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かずいねにけらしも
舒明天皇『万葉集』
京都の小倉山は、平安京に都が移った時にここから名前をもらったらしい。藤原定家の「小倉百人一首」の小倉山がそれだ。
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