2017年11月19日日曜日

第69回正倉院展に行きました

第69回正倉院展 11月13日まで
今年69回目となる正倉院展は11月13日に終了した。手術後のリハビリで外出など思いもよらないと諦めていたが、毎年秋の恒例行事になっているので、行ってみた。
長い時間を待つのは、体力が持たない。ネットで調べると、16時以降なら空いているとの情報があり、それを信じて入ると、待ち時間10分。でも中は空いてるわけでもなく、人気の出展品には行列が続いている。毎年、新聞やTVで目玉出展品の紹介があるのに、今年は余り目にしなかったが、ポスターになっている「羊木臈纈屛風 (ひつじきろうけちのびょうぶ)」と「緑瑠璃十二曲長坏 (みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)」が目を引く。

羊木臈纈屏風図
巻角の羊
羊木臈纈屛風 (ひつじきろうけちのびょうぶ)
臈纈(ろうけち)とは、いわゆるろうけつ染め手法のこと、日本や中国には居なかったはずの巻角の羊が大きく描かれている屏風の残欠。当時の人達はこの動物を何だろうと思ったに違いない。羊が樹下に立っており、樹上には2頭の猿が遊び、下方には山頂に樹木が小さく表された険しい山が見える。山の左方の頂き近くには1頭の子鹿も添えられている。
巻角(まきづの)の羊や樹下に動物を置く構図は、ササン朝ペルシアの美術に由来するらしいが、下端に墨で、天平勝宝3年(751)わが国で製作されたことを示す墨書が残されている。遣唐使が持ち帰った図柄を元に当時の最高の技術者と資金を投入して作られたと考えられる。現物は退色した黄色が主体だが、古代の染料を分析し、再現したところ朱色,黄色と緑の鮮やかな染料が使われており、とても綺麗な絵だったことが判明した。使われた技術が余りに精緻で、高度だったため後世に伝えられなかった。いわば天平時代だけに花咲いた芸術作品である。出展品全てに言えることだが、1300年も昔の美術品、しかも染ものがこんなにきれいに残って今も鑑賞に耐えるというのは、世界に誇れることではないか。

緑瑠璃十二曲長坏 (みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)
長い行列の出来ていた出展品の一つ、見ただけで美しさが際立つガラスの器だ。まるで江戸切子のような柄が刻まれており、黙って出されたらきっと現代のものと思うだろう。
緑瑠璃杯
色と形、模様が現代的
また、形が杯とは言いながら、楕円形をしており、長径22.5cm、短径10.7cmと大振りである。濃緑色のガラス製の長楕円形の杯は、ササン朝ペルシア時代の遺品に多い。長側面の両側に半月形のひだが3段ずつ付き、口縁に12の波ができることから十二曲長坏(じゅうにきょくちょうはい)とよばれる。ゆるやかな曲面に沿って植物文様が刻まれ、長側面の口縁近くにはうずくまるウサギ、短側面にはチューリップに似た花輪がある。鉛ガラス製で、鉛分を多く含んでいることから中国製と考えられており、異国情緒を感じさせる品だ。
玉の尺八
大理石製、どのようにして
作ったのか、まるで竹製

玉尺八 [ぎょくのしゃくはち] (石製の縦笛) 
唐の2代皇帝・太宗のときに作られた古代の尺八は、当時は孔が前面5箇、背面に1箇あり、今日の尺八が前面を4箇とするのとは異なったようだ。 この品は『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に「玉尺八一管」と記されており、聖武天皇ゆかりの尺八で、実際に使われていたそうだ。玉(ぎょく)と呼ばれているが大理石製である。尺八は本来竹製だが、大理石のような硬い石を用いながら3節の竹管を忠実に表現している。見事な造形、一体どのような方法で作ったのか、旋盤もない時代に大理石をくり抜いて、彫刻としても素晴らしいのに、ちゃんと楽器として機能するように造られているも驚きだ。

金銅水瓶 [こんどうのすいびょう] 
鳥の頭が注ぎ口になった
水差し
(金メッキの銅の水差し)鳥の頭形の注口が面白い銅製鍍金の水瓶。胴体は扁平な球形で、上に広口の受水口、下に裾広がりの高台、そして鳥の頭形注ぎ口に続く細長い頸部が側面に接続している。鳥頭のとさかの表現から、これは鳳凰を表しているらしい。受水口の頸部や高台には花弁が刻まれている。全体を10数箇に分割して打ち出しで作り、複数の材をろう付けと鋲留めを組み合わせてつなぎあわせ、鍍金をして仕上げるという工程がとられている。 
これ以外に同様の品が知られていないエキゾチックな形の水瓶で、高度で複雑な技術をもって作り上げられており、非常に珍しい金工品である。

正倉院御物を通して、遣唐使の役割がとても大きかったことが分かる。遣唐使は、当時世界トップの国際都市だった長安から、仏教を中心にした万能の科学として、政治制度、土木、医薬、工芸、哲学などの先端技術と文化全般伝えた。奈良時代は人の青春時代の様に、新しいことへチャレンジして、唐に追いつきたいとエネルギッシュに活動した奇跡の時代だった様に思える。


紅葉にはまだ早かったが、庭園内の紅葉が1本だけ
きれいに色づいていた

 

0 件のコメント: