2018年4月30日月曜日

人類はロボットを目指す


大阪大学石黒教授と自身のアンドロイド
大阪大学、石黒浩教授は、ロボット工学者で、英国のコンサルタント会社が選んだ「世界の生きている天才100人」にて日本人最高の26位に選出されている。TV番組にも時々、彼自身の気味が悪いロボットが出演している。桂米朝のアンドロイド、夏目漱石のアンドロイド、マツコアンドロイドなど次々に作ってその都度話題になっている。彼の作るアンドロイドも面白いが、研究の目的と、そこに至る論理がとても興味深いので、紹介したい。

石黒教授は海外講演の依頼に、自分のアンドロイドロボットを派遣する、本人が出向くより、最近ではロボットの方が人気があり講演要望が多い。本人が行って講演するのは別に珍しいことではないが、ロボットが講演するのは珍しいし、興味を持たれる。講演をロボットが行うのはこの時代難しいことではないが、質疑応答は本人でないと答えられない。
夏目漱石ロボット
しかしインターネットで質問に答えることで、殆どタイムラグなく返事が出来る。大学にこのアンドロイドに給料を支払うべきだと言ったら、生身の人間でないと給料は支給できないと言われた。生身の人間でないと仕事は受けられないのか。例えば、義足だったら人間では無いのか、臓器の一部が人工物だったら人間ではないのか。パラリンピックの選手を見れば分かるように、義足をつけた選手のほうが、むしろ健常者よりはるかに運動能力がある訳で、彼らをアンドロイドと言う人は居ない。先日亡くなった世界的物理学者ホーキンス博士は、進行性筋ジストロフィーのため、身体のほとんどが麻痺し車椅子、コンピュータによって移動・コミュニケーションしていた。彼は世界中誰でも無条件で100%人間と認める。そうすると生身の人間とはどう言うことを指すのか。本人のアイデンティティは何かと言うことになる。人間の存在とは何なのか。


原始生命体が偶然、生まれて36億年、現代人類が存在する。原始生命体から今日の人類に進化させたのは遺伝子である。しかし、人類は技術を開発し、技術利用によって人類を進化させて来た。技術による進化は遺伝子による進化よりはるかに早く、人間の活動は今やほぼ全てが技術に支えられている。
生命体の発生から今日までを見ると人類だけが技術利用に
より、有機物の生体をどんどん無機物に替えてきた歴史がある
人間とは技術を開発し利用する動物である。有機体生命である人間は、技術によって、無機物を利用し、自分の機能をどんどん無機物に取り替え続けて来た。身につける衣服、住居、あらゆる活動を支える道具類など。特に二百年ほど前の蒸気機関による筋力の拡張は人類の社会生活を根本的に変革し、産業革命を生んだ。電気の利用、コンピュータの発明による知的活動の拡張によって人類は、大脳機能をほぼ無限に拡大して来た。やがてインターネットの出現で秒速のコミュニケーション手段を得、世界がつながる。インターネット以前(BI:Before Internet)では技術進歩は比例的速度であり、自然の営みは殆どその法則にしたがって来た。例えば、獲物である動物が走って逃げる、それを待ち受けて捉えるためには、どのくらい先で待ち伏せるべきなのか、人間でなくとも動物は計算して待ち受けていた。比例計算である。

インターネット以降(AI:After Internet)の技術進歩は、過去のどんな時代にも経験したことのない指数級数的なスピードで発展している。半導体の進歩は、18ヶ月で能力2倍、コスト半分になる進化をずっと続けている。
美少女アンドロイド
このままの傾向が続けば2045年には、1つのチップ上に、一人分の大脳、1000億のシナプスと200億の脳細胞の合計1200億の細胞に 全人類70億人を積算した容量を実現できると言われている。これがシンギュラリティである。有機体である生物の追従できる速度を遥かに超える。無機物を技術で進化させて利用して来た人類はこの先、どこへ行こうとしているのか。

人類は有機体であるタンパク質で出来ている、生命科学では、タンパク質は120年で寿命が尽きるとされている。この限られた寿命のために生物は遺伝子によって、次世代に生命を伝えてきた。複雑な分子構造を持つ有機物生命体は環境適応性が高いが、一方、その複雑な構造は壊れやすく、環境変動に追従できないと消滅してしまう。過去200年来の技術進化のスピードを見ると、人類はさらなる進化を有機体から無機物に置き換えることで生き延びようとしているように見える。人類の歴史は肉体の制約から解放されようとして常に技術開発を続け、無機物によって肉体を代替発展させてきた。1000年先を考えた時、例えば、宇宙空間の異変に有機体である人類は耐えられるのか、甚だ疑わしい。

人間であることはどう言うことなのか、体のいろんな機能を無機物に代替させる事が現代医学の進歩だとすると、どこまで無機物に置き換わったら人間ではなくなるのか。
生身の人間だけでは月には行けない、技術を道具として使うことで人間は月にも、宇宙にも行ける。技術とは人間の能力を置き換えるものであり、拡張するものである。人は、心肺機能を機械に置き換えても、脳が生きていれば、人間と呼ぶだろう。人のアイデンティティとは、結局大脳であるらしい。脳をコンピュータで置き換える技術はまだ無いが、現在進行中の人工知能がシンギュラリティにより、ブレインアップローディング(脳活動をコンピュータに移植する)ことが出来れば、人のアイデンティティをもったロボットが出来るだろう。

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